世界は今、最適化された情報で溢れています。
瞬時に手に入る明快な結論の傍らで、効率の名のもとに削ぎ落とされていく「曖昧なもの」や「迷う時間」。
その速さの中で見失われかけている、自ら想像を巡らすための大切な余白を、
私は静かに見つめ直したいと考えています。
私が向き合っているのは、中判のフィルムカメラという、確実なプロセスを必要とする道具です。
一本のフィルムに許された、わずか12枚という制約。
シャッターを切るたびに生まれる自問自答と、光を銀の結晶として定着させる物理的な手応え。
そこには、加工されることのない「物質としての事実」が刻まれ続けています。
色彩を削ぎ落としたモノクロームの階調の先に宿るのは、
かつてそこに誰かがいたという確かな気配「不在の存在」の記録です。
一枚の静止画が、見る人の想像力を起動させる触媒となること。
曖昧な領域に身を置き、自由に思考を巡らせる豊かさを分かち合うこと。
その余白の中にこそ、世界を捉えるための実感があると信じています。
効率や正解を求める日常の傍らで、一枚のシャッターから始まる物語を。
あなたの明日が、昨日よりも新しい一日でありますように…。
2026.4 m.
